健康と病気は、白と黒ではない。その間にある広いグレーの帯を「未病」と呼ぶ。この章では、日本人が平均で8〜12年という長さの「不健康な期間」を抱えている事実から出発し、この教科書が何を扱い、何を扱わないかを決める。
第1章 / 全10章
2022(令和4)年の日本人の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳。一方、健康上の問題で日常生活が制限されない期間=健康寿命は、男性72.57歳、女性75.45歳でした。差は男性で8.49年、女性で11.63年。これが「不健康な期間」と呼ばれる長さです。
この差は2010年ごろから緩やかに縮小してはいるものの、平均寿命自体も伸びるため、グラフはほぼ平行線を描いています。長生きの分だけ、不自由な期間も一緒に伸びてきた——これが数字の示す構図です。
本サイトが扱うのは、この差を縮める側の話です。病気を治す方法ではなく、病気とまではいえない段階でできることを扱います。
「未病」は、東洋医学に由来する言葉ですが、現代の予防医学の文脈でも使われます。検査値に異常はないが疲れが抜けない、体力の低下を自覚している、といった状態が典型です。
この帯にいる人にとっての「介入」は、投薬でも手術でもありません。身体活動・睡眠・食事という、日常の変数です。地味ですが、この段階で動かせる変数の効き目は大きい——なぜなら、まだ何も壊れていないからです。
本サイトは診断をしません。「その症状は◯◯病の疑いがある」とは書かないし、「この数値なら受診不要」とも書きません。医学的判断は医療者の領域であり、統計と計算でできることの外側にあります。
その代わり、私たちは数字の扱い方に徹します。何メッツ・時が推奨されているのか。自分の全身持久力は同世代の何%か。睡眠の負債は何時間か。判断材料を精密に渡すことが、この教科書の役割です。
| 指標(2022年) | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 平均寿命 | 81.05 歳 | 87.09 歳 |
| 健康寿命 | 72.57 歳 | 75.45 歳 |
| 差(不健康な期間) | 8.49 年 | 11.63 年 |
仮に40歳の人がこの差を2年縮められたとすると、それは「自分の足で行きたい場所へ行ける時間」が2年増えるということです。金額に換算する試算もありますが、本サイトは換算しません。時間そのものが目的だからです。
健康寿命は「日常生活に制限のない期間」を国民生活基礎調査の自己申告から算出します。女性は平均寿命が長い分、要介護に至る期間も長くなりやすいこと、骨粗鬆症や関節疾患の有病率が高いことなどが背景として指摘されています。ただしこれは集団の傾向で、個人の見通しを示すものではありません。
厳密な診断名ではありません。健康と病気の連続性を捉えるための概念で、行政の健康政策でも使われます。本サイトでは「まだ病名がつく前の段階で、生活の変数を動かせる領域」という意味で使っています。
1. 2022年の日本人の健康寿命と平均寿命の差は、男性でおよそ何年か。
男性8.49年、女性11.63年です。この差を縮めることが健康日本21(第三次)の中心的な目標に置かれています。
2. 本サイトが扱う「未病」の領域に含まれないのはどれか。
診断は医療者の領域です。本サイトは統計と計算に徹し、判断材料を渡すところまでを担当します。