運動を増やせば、食事も変わる。この章では、消費エネルギー(TDEE)とたんぱく質という2つの数字に絞る。本サイトは食事法を推奨しない。数字の意味を渡すところまでを担当する。
第8章 / 全10章
基礎代謝(何もしなくても消費するエネルギー)に、身体活動レベル(PAL)を掛けたものがTDEE——1日の総消費エネルギーです。
本サイトがTDEEを扱うのは、減量の目標設定のためではありません。運動を増やしたとき、食事も増やすべきかという判断のためです。活動を増やして食事を据え置けば、それは意図しない減量になります。
食事摂取基準の推奨量は18〜64歳で男性65g/女性50g。これは不足を防ぐための値です。一方、筋量の維持・増加を目的とするなら、体重1kgあたり1.4〜2.0gというレンジが目安になります。目的が違えば、数字も違う。
そして、総量と同じくらい効くのが分配です。朝5g・昼20g・夜60gより、3食に均等に配るほうが筋タンパク合成には有利とされています。多くの日本人の食事は、朝が薄く夜が濃い形をしています。
高齢期には、同じ量のたんぱく質を摂っても筋タンパク合成の反応が鈍くなります(同化抵抗性)。若い頃と同じ量では、維持できなくなる。
だから、食事だけでは足りません。筋力トレーニングという刺激と組み合わせて初めて、たんぱく質は筋になります。第6章と、この章はセットです。
糖質制限が良いか、地中海食が良いか——本サイトは判定しません。個人の嗜好・文化・持病によって最適解が変わる領域であり、統計と計算で断定できる範囲を超えているからです。
その代わり、TDEE計算機とたんぱく質計算機で、判断材料としての数字を精密に渡します。
38歳男性・172cm・68kg・PAL 1.75の場合:
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 基礎代謝(国立健康・栄養研究所の式) | 約 1,516 kcal |
| TDEE(×1.75) | 約 2,654 kcal |
| たんぱく質(食事摂取基準の推奨量) | 65 g |
| たんぱく質(筋トレ週2〜3回の目安 1.4〜1.7g/kg) | 95〜116 g |
| 1食あたり(3食均等) | 約 32〜39 g |
1食32〜39gは、鶏むね肉なら約150g。決して非現実的な量ではありませんが、朝食が「トーストとコーヒー」の人には届きません。差が出るのは、たいてい朝です。
食事で必要量に届くなら不要です。届かない場合の補助手段としては合理的ですが、優先順位は「食事の分配を直す」が先です。
TDEEが上がった分は、理論上は摂取を増やしてよいことになります。ただし運動による消費は過大評価されがちです(体重68kgで速歩1時間=約240kcal、おにぎり1.5個分)。数字で見ると、運動の消費は思うより小さいことが分かります。
本サイトは断定しません。ただし、たんぱく質の分配という一点においては、朝に一定量を確保するほうが有利であるという知見があります。
1. 食事摂取基準の推奨量(男性65g)が示しているのは。
推奨量は不足を防ぐための値です。筋量の維持・増加を目的とする値とは、目的そのものが違います。
2. たんぱく質の摂り方として、より有利とされるのは。
総量が同じでも、3食に配るほうが筋タンパク合成には有利とされています。
3. 加齢によって起こる変化は。
同化抵抗性と呼ばれます。だからこそ、食事に加えて筋力トレーニングの刺激が必要になります。