体力を一つの数字で表すなら、VO2max(最大酸素摂取量)がもっとも近い。この章では、それが何を意味し、どう測り、どう上げるかを扱う。走らずに測る方法から始める。
第3章 / 全10章
VO2maxは、体重1kgあたり1分間に取り込める酸素の最大量(mL/kg/分)です。酸素を取り込み、運び、使う——肺・心臓・血管・筋肉のミトコンドリアという一連の系全体の性能を、一つの数字に圧縮したものです。
だから「体力の総合点」に近い。そして、この数字が高い人ほど将来の死亡リスクが低いことが、多数の追跡研究で一貫して示されています。ただし、それは相関であり、因果の全てではありません。本サイトはこの点を誇張しません。
非運動推定:年齢・BMI・運動習慣から推定。走らなくてよいので、運動を長く離れていた人の出発点に向いています。
12分間走(クーパー・テスト):12分間の走行距離から推定。実測に近いが、ほぼ全力の運動になるため、体調が万全なときだけ。
安静時心拍法:推定最大心拍数と安静時心拍数の比から。手軽ですが誤差は最大です。傾向を見る用途に。
どれを選んでも構いませんが、次回も同じ方法で測ること。方法を変えると、変化なのか誤差なのかが分からなくなります。計算機はこちら。
VO2maxを上げる最短経路は、実は地味です。週の有酸素運動の大半をゾーン2(会話ができるが歌うのは苦しい強度)に置き、その上に週1〜2回だけ高強度を乗せる。この「ピラミッド型」の配分は、持久系の競技で広く採られている構造です。
やりがちな失敗は、毎回「そこそこきつい」ゾーン3で走ること。土台も作れず、高強度の刺激も入らない、中途半端な帯です。心拍ゾーン計算機で、自分のゾーン2の心拍数を具体的な数字にしてください。
厚生労働省が示す全身持久力の基準値(概数、mL/kg/分):
| 年代 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 18〜39歳 | 39 | 33 |
| 40〜59歳 | 35 | 30 |
| 60〜69歳 | 32 | 26 |
注意深く読むと、40代の男性(35)は18〜39歳の女性(33)とほぼ同水準です。年齢による低下は、性差より大きい。そして、この低下の一部は加齢そのものではなく活動量の低下によるものだと考えられています。避けられない部分と、避けられる部分がある——ここが希望の在り処です。
運動習慣のなかった人が週2〜3回の有酸素運動を始めると、数週間から3か月ほどで測定可能な変化が現れることが一般的です。ただし個人差が大きく、伸びしろの大きい人(=初期値の低い人)ほど大きく動きます。
走る必要はありません。ゾーン2は速歩でも自転車でも水泳でも到達できます。重要なのは強度と時間であり、種目ではありません。膝や腰に不安がある場合は、荷重の少ない自転車や水中運動が現実的です。
1. ゾーン2の目安として正しいのはどれか。
ゾーン2は「会話はできるが歌うのは苦しい」程度。心拍計がなくても、会話テストで代用できます。
2. 持久力トレーニングでやりがちな失敗はどれか。
土台も作れず高強度の刺激も入らない、中間の帯に居続けるのが最も非効率です。