運動には2つのものさしがある。心拍数は「自分にとってどれだけきついか」を測り、メッツは「客観的にどれだけの強度か」を測る。両方を使い分けられるようになると、運動計画は具体的な数字になる。
第4章 / 全10章
メッツ(METs)は安静時を1としたときの強度の倍率です。普通歩行3.0、速歩4.3、階段を上る8.8、ジョギング7.0。誰が行っても同じ値になる絶対強度の指標です。
便利なのは掛け算ができること。「メッツ×時間」で活動量(メッツ・時)になり、「メッツ×時間×体重×1.05」でおおよその消費エネルギーになります。
同じ速歩4.3メッツでも、体力のない人には全力に近く、鍛えた人には散歩です。その人にとっての負荷を測るのが心拍数です。
単純に「最大心拍数の◯%」とすると、安静時心拍の低い人ほど強度が過大評価されます。そこでカルボーネン法——安静時心拍を引いた「余力(心拍予備能)」を基準に取ります。
計画にはメッツ、実行には心拍。「週23メッツ・時を積む」という設計はメッツで行い、「今この瞬間、上げすぎていないか」の判断は心拍で行う。地図と羅針盤の関係です。
心拍計がない場合、会話テストが実用的な代替になります。文章で受け答えできる=ゾーン2。単語しか返せない=ゾーン4以上。人間の身体は、意外と正確なセンサーを持っています。
38歳・安静時心拍62拍/分の場合(Tanaka式:208−0.7×38=181.4拍/分)
| ゾーン | 強度(HRR) | 目標心拍数 | 週の配分の目安 |
|---|---|---|---|
| ゾーン2 | 60–70% | 134–146 | 大半(週2〜3回・各30〜60分) |
| ゾーン4 | 80–90% | 158–170 | 週0〜1回 |
| ゾーン5 | 90–100% | 170–181 | 週0〜1回(HIITの高強度パートのみ) |
数字にすると、ゾーン2の上限146拍/分は「思ったより低い」と感じる人が多いはずです。それが正常な反応です。ほとんどの人は、土台を作るべき日に上げすぎています。
推定式で十分です。実測(全力での追い込み)はリスクを伴うため、本サイトでは推奨しません。式による推定には±10拍程度の個人差があることを前提に、幅を持って使ってください。
使えますが、誤差が大きく、特に中高年で低めに出る傾向があります。Tanaka式(208−0.7×年齢)のほうが集団での当てはまりが良いとされています。
β遮断薬などは心拍数に直接影響します。この場合、心拍ゾーンの計算は当てはまりません。強度の設定は主治医の指示に従い、主観的運動強度(RPE)や会話テストで代用してください。
近い強度の活動で代用して構いません。厳密さより、週単位で継続的に同じ基準で数えることのほうが重要です。
1. メッツと心拍数の使い分けとして適切なのは。
地図(メッツ)と羅針盤(心拍)。役割が違います。
2. カルボーネン法が単純な%法より優れる理由は。
心拍予備能を基準にすることで、心肺機能の個人差に強くなります。